順位は落ちていないのに、検索からの流入だけが減っている。2024年5月にGoogleが米国でAI Overviews(AIによる概要)の広範なテストを始めて以降、この相談が増えました。
ただし、流入減の原因をAI Overviewsだと決めつけるのは危険です。本記事では、原因を正しく切り分ける手順、測定でつまずきやすい落とし穴、そして90日間で立て直す進め方を整理します。ベトナム市場で事業を展開される日系企業の担当者の方が、社内で説明し判断できる水準を目安にまとめました。
まず「AI Overviewsのせい」と決めつけない
実務では、AI Overviews以外の要因のほうが多いのが実情です。原因を誤ると、直すべき場所を直さないまま時間だけが過ぎます。次の順で潰してください。
- 技術面の事故:
noindexの誤設定、robots.txtの変更、サーバー障害、リダイレクトの取り違え、サイト移行の後始末 - Googleのアップデート:Google検索ステータスダッシュボードや順位変動ツールで、下落の時期と更新時期が重なっていないかを確認
- 季節性と市場要因:前年同期との比較。前月比だけを見ると季節変動を異常と誤認します
- 計測側の問題:タグの二重設置や欠落、ボットやプリフェッチの混入
最後の点は特に重要です。ボットや事前読み込みのアクセスを除外せずに集計すると、実態より大きな下落に見えることがあります。TOSでは、原因の切り分けの前にまず計測が正しいかどうかを確認します。
時期の照合
解析ツールで2024年5月以降の推移を確認し、下落の開始時期がAI Overviewsの展開と重なるかを見ます。ただし、検索の一部がAIアシスタントへ移る動きは四半期・年単位で進む緩やかな変化です。First Page Sageの推計(2026年8月11日公開)では、2026年第2四半期のデジタル検索クエリに占める割合はGoogle検索57.0%、ChatGPT 17.9%、その他25.1%であり、情報収集型に限ってもGoogleが71%、ChatGPTが23%でした。1週間で完結するような急落は、この流れが原因とは考えにくいということです。
影響を受けているキーワードとページを特定する
手順はシンプルです。
- 主要キーワード20〜50件を実際に検索し、AIによる概要が出るかを目視で確認する
- 順位計測ツールで、SERP機能の列にAI Overviewsの表示があるキーワードを抽出する
- 順位は維持しているのに表示回数あたりのクリックだけが落ちたページを洗い出す
「順位は変わらないのにクリック率だけ下がった」ページが、最も典型的な被害の形です。
Search Consoleだけでは判断できない理由
Google Search Consoleのデータ保持期間は16か月です。AI Overviewsの米国展開は2024年5月なので、2026年時点で見ると展開前の状態と比較するためのデータがすでに残っていない可能性があります。
また、Search ConsoleはAI Overviews経由の表示とクリックを通常の検索結果と分けて報告しません。長期の保存ができる解析ツールと併用し、2024年以降を期間比較できる状態にしておいてください。
AI Overviewsで実際に起きていること
ゼロクリックは増えていない
Semrushが20万件のキーワードを追跡した結果では、AI Overviewsが表示される検索のゼロクリック率は33.75%から31.53%へわずかに低下しました。要約が出ると必ずクリックが消える、という単純な構図ではありません。
差が出るのは引用されたかどうかです。回答の出典として提示されたページは流入を得られ、提示されなかったページは順位を保っていても失います。
モバイルとデスクトップで挙動が違う
ゼロクリック率はモバイルが17.3%、デスクトップが25.6%と、モバイルのほうが低く出ています。画面の狭いモバイルでは要約だけで完結しにくく、出典をたどる行動が残る、という解釈が成り立ちます。デバイス別に分けずに平均だけを見ていると、この違いを見落とします。
流入を失いやすい検索の種類
1,000万件超のキーワード分析では、AI Overviewsを発動する検索の88.1%が情報収集型でした。具体的には次のような問いです。
- 「〜とは」という定義や用語の説明
- 「〜の方法」という手順の説明
- 単位換算、日付、営業時間のような一問一答で終わる事実
- 短くまとめられる比較
逆に、判断や体験、独自データ、見積りや相談といった要約では代替できない内容は影響を受けにくい領域です。
どのページから守るべきか
すべてを同時に直すことはできません。優先順位は次のとおりです。
- 売上に直結し、かつ流入が落ちたページ。ここが最優先です。
- 指名検索・比較検討の受け皿ページ。購買に近い検索にもAIの要約が広がっています。
- 引用される可能性が高い解説ページ。事実と定義が明快なものは、少しの手直しで出典に選ばれやすくなります。
一方、定義だけで完結する短い用語ページを大量に作り直す作業は、費用対効果が低くなりがちです。
引用される側に回るための書き方
AIが出典として使いやすい形に整えることが、最も確実な打ち手です。
- 結論を先に書く。前置きを読まないと意味が通らない構成は引用されません。
- 1つの段落が単体で意味を成すようにする。AIは段落単位で材料を拾います。
- 事実・数値・出典・時点を明示する。曖昧な表現は採用されにくくなります。
- 要約では得られない価値を足す。自社データ、実例、費用感、失敗例、判断基準。ここがクリックする理由になります。
- クロールを許可する。スニペット表示の制限やAI機能からの除外が意図せず入っていないかを確認します。
Pew Research Centerの調査では、AIの要約に接した利用者のうち、提示されたサイトをクリックしたのは約1%にとどまりました。クリック率が低いからこそ、要約の先に進む理由を用意できているページだけが残ります。
90日間の立て直し計画
| 期間 | やること | 到達点 |
|---|---|---|
| 1〜30日 | 計測の妥当性確認、技術面の事故の排除、影響キーワードとページの特定、AI Overviews表示率の実測 | 原因が特定され、対象ページの一覧がある |
| 31〜60日 | 優先ページの結論先出し・事実の明示・独自価値の追加、構造化データとクロール設定の整備 | 主要ページが引用されやすい形に整っている |
| 61〜90日 | 引用状況と指名検索の変化を計測、第三者メディアでの言及を増やす、対象を次の階層へ拡大 | 露出と引用が数値で追える状態 |
90日で順位が戻るとは限りません。目的は評価軸を順位と流入だけから、引用と指名検索まで広げることにあります。
AI Overviewsによる流入減に関するよくあるご質問
順位は同じなのにクリックだけ減りました。AI Overviewsが原因ですか?
可能性はありますが、確認が先です。計測にボットやプリフェッチが混じっていないか、技術面の事故がないかを潰したうえで、該当キーワードに実際にAIの要約が出ているかを目視で確かめてください。
AI Overviewsに表示されないようにできますか?
スニペット表示を制限すれば露出は減りますが、通常の検索結果での見え方にも影響します。引用の機会だけを失う結果になりやすいため、推奨していません。
ゼロクリックになったキーワードは諦めるべきですか?
一問一答で完結する事実系の検索であれば、深追いの優先度は下げて構いません。ただし指名検索や比較検討につながる語は、流入が少なくても押さえておく価値があります。
回復にはどのくらいかかりますか?
技術面の修正は数週間で反映が見え始めます。引用の安定にはコンテンツと外部からの評価の蓄積が必要で、通常は数か月単位で考えます。
どこから手をつければよいか判断がつきません?
TOSでは、まず計測の妥当性を確認してから原因を切り分け、優先度の高いページから着手します。AI Visibility Checkでは6つのGEO評価軸でサイトを採点し、同業他社3社と比較できます。
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